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春遠からじ
ペットといっしょに考えよう【フキノトウ】写真
フキノトウ
ひときわ寒さが肌を刺します。
 出勤時、郊外の最寄り駅前にある電光掲示板は、−3度を示していました。


体感のほかに、もう一つ寒さの尺度となるのがアイツ(11才・32Kg)の水飲みボウルです。年明け以来、薄氷が張るのは毎度のことですが、このところ拳で割るには歯が立たぬほどの厚氷が続き、早朝散歩後は室内の水で対応しています。それでも、地球温暖化がかまびすしく取り上げられている昨今は、いかにも冬らしさに妙にホットさせられます。それと言うのは、これから先も人間の所業により地球をいじめ続け自然界を狂わせるならば、各所でその災いが噴出し、人間の我欲等はひとたまりもないと思うからです。

 俗に、堪忍袋の緒が切れると言われます。お若い読者の方はご存じないかもしれませんが、堪忍とはこらえて我慢することで、その度量を体内器官の袋に例えたのです。同様に、ならぬ堪忍するが堪忍、とも言われました。即ち、もうこれ以上我慢できない、というところを我慢するのが真の我慢強さであるとの意です。そこまでエネルギ−を貯えるからこそ、爆発のインパクトが強いのです。今時なら、キレルと言うのでしょうか。しかし、本来は我慢が限界に達した後に理性が失われる状態だから、キレルはずなのですが、それがプロセスをカットして瞬間湯沸かし器のようにいきなりキレル事例が跡を絶ちません。これでは、キレルのではなく最初から我慢や理性の片鱗すらなかったことになります。

 いつからこのような時代になったのでしょう。文明社会の恩恵は否定しませんが、同時に豊さとともに大量生産・大量消費がはびこり、幼少時より物を大事にして我慢する生活習慣が欠如したせいかもしれません。併せて、今の社会は個人の価値観が複雑に多様化したにもかかわらず、何事によらず2極化に両断して決めつける風潮が横溢しています。善か悪か、是か非か、勝ちか負けか、好きか嫌いか等、すべからく短絡的なのです。健全な社会常識のもとで、より前向きで発展的なグレーゾーン(緩衝見解)を認め合い、我慢と理性に磨きをかける必要があります。マータイさんの「もったいない」思想が先進諸国で脚光を浴びるのは皮肉な警鐘であり、一方では、偏見を押しつけ合う動物愛好者グループが繰り返す不毛な衝突等も少しは減るはずです。

 寒さが厳しさを増すにつれ、逆に週一ほどの割合で気圧配置が崩れがちで、一雨毎に春遠からじを実感しています。庭の枯草の中では、早くも親指大のフキノトウが顔をのぞかせました。家人は、アイツのオシッコの洗礼(?)を警戒して敬遠気味ですが、今から食卓に乗るのを楽しみにしています。あと一息の辛抱です。冷たい風の中でも背中を丸めずに、頭を上げて悠然と楽しい散歩を続けていくよう、アイツと励まし合っています。

財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長 会田保彦

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