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「動物愛護」のジレンマ
ひところ、「○○にやさしい」というコピーがマスメディアに氾濫していた。曰く○○は地球であり、環境であり、そして動物である。ストレスにさいなまれ、ギスギスして世の中における拠として誰しもが「やさしさ」を求めており、耳に心地よく素直に受け止められるからであろう。

しかしながら、広告の効果はともかく、実感する世相への波及効果はいかがなものであろうか。雰囲気は伝わるのだが、いずれも底の浅い一過性の理念として言葉だけが一人歩きして、やがて手垢にまみれて消えているのが現状のような気がする。
例えば、「地球にやさしい」という壮大なテーマを詠うならば、そこではまず地球温暖化防止が最優先であり、そのために二酸化炭素や化学物質フロンなどによる「温室効果」のメカニズムを究明し、もたらされる様々な悪影響①水資源の渇水化②自然生態系における動植物の危機③農作物の減少などに対して果敢な防止策を講じなければならないはずで、単なる言葉遊びで済まされる問題ではない。
同じに、「動物にやさしい」即ち動物愛護についても然りである。確かに、今、多くの人々の間で「動物愛護」が情熱的に語られている。しかし、実態においてはその普及啓発に携わる者として内心いささか忸怩(じくじ)たる思いがある。
それは一つには、物言えぬ動物に深く慈しみをかけているのだが、何故か近隣の人々とコミュニケーションができずにができが隔絶し、ひたすら動物にのめりこんでいるヒトがいる。二つには、動物愛護を標榜し懸命に活動しているのだが、かたわらで常に他団体や行政との確執に明け暮れている任意のグループがある。いずれもが、動物には極めてやさしいのだが、人にはやさしくないのである。
その結果、人と動物の関わりに関するわが国で唯一の立法措置である「動物の愛護及び管理に関する法律」の目的“動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の滋養に資する(一部抜粋)”に理解と関心を広めることにブレーキをかけてしまう。ジレンマにおそわれ深く悩む所以である。
ペットの存在に対する飼い主のイメージを一言で表すと、大半の人は「家族の一員」と答えている。ならば当然「社会の一員」でもある。動物へのやさしさをアピールするのならば、まず身の回りの人間関係に十分な配慮をし、適正な飼育を心がけることである。
財団法人日本動物愛護協会
理事・事務局長会田保彦

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