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ペットといっしょに考えよう

アンバランスの是正
“好きなだけで動物を飼えるわけではない”
動物を慈しむやさしい人柄(感情)、動物の特性や生理の知識(科学)のバランスが取れてこそ、真の共生といえるのではないでしょうか。


バサバサ、カサカサ、バサカサカサ・・・・。
広大な雑木林の中、色とりどりの落ち葉を踏み分けて進む1人と1匹の足音だけが、静かに心地好く続いていく。冬の来る前、この時期における犬との散歩はすこぶる楽しい。
まず、寒さに強い犬のコンディションは絶好調をむかえ、蚊やノミの心配も少ない。
そして、何よりも季の移ろいを実感できる自然が素晴らしい。
俗に「自然は偉大な芸術家である」と称されているが、特に、つるべ落としの真っ赤な落日を浴びながら、刻一刻と様相を変える紅葉は得も言われぬ美しさであり、言葉にするとあまりに軽すぎるし、さりとて拙い筆ではとうてい表現することもできず、ひたすら感動してたたずむのみである。
あたかも泥沼をもがきながら進むがごとき多忙が続き、ようやくたどり着いた週末の束の間の一時をこのような自然の中に犬とともに身を置いていると、いつしか乾いた心身にしっとりと潤いが満ちてくるような至福を覚えてくる。
そして、当然のことながら帰路には大きなビニール袋(フン)を手に下げている。
折りしもそんな散歩から戻ると、偶然に奇抜なコピーのテレビCMが目に飛び込み、同時にテロップが流れてきた。曰く“産むだけで親になれるわけではない”。わずか数秒の極めて短い映像だが、いつもピカッと光る濃い内容で評判の高い「公共広告機構」の制作によるものであり、とかく精神と肉体がアンバランスでセックスの好奇心だけに突っ走る若者たちのカップルに対し警鐘を発しているのだろう。けだし名言と思わず手を叩いた次第である。
実は、人と動物の関わりについても然りなのである。日頃、各所で口を酸っぱくしながら主張してやまない自説とピッタリ重なるのだ。即ち、動物を慈しむやさしい人柄(感情)は十分に承知しているのだが、肝心な動物の特性や生理の知識(科学)が乏しい日本人の動物観に対して感情と科学のアンバランスを是正すべく訴えているところなのである。引用で恐縮だが、改めて声を大にして言う“好きなだけで動物を飼えるわけではない”と。
真の共生とは、一方の諮意だけで成立するものではなく、まず動物たちの命(健康と安全)に終生責任を取る覚悟を持つことから始まる。その上で、多くの方が動物たちと触れ合う喜びを享受して欲しい。

財団法人日本動物愛護協会
理事・事務局長会田保彦

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