ペットといっしょに考えよう
めくらまし
4月の下旬、いつものように何気なくのぞき込むと、いきなりラグビーボール位の親鳥が2羽揃って川面を飛び立ち、我々の目前およそ3mに着地いたしました。いつもはタレ目のアイツも、豆鉄砲をくらったような顔でボーとしています。いささか思い当たる節もあり、翌朝に再び試してみました。案の定、近づいた途端に今度は2羽が頭上でホバリングを始めたのです。ヒナを護るために必死で擬態(めくらまし)を繰り返す、天晴な親の情愛にすっかり感心させられました。ヒナはちゃんと5羽とも残っています。 一方、人間社会に目を転じると、動物虐待もさることながら、憂うべきは頻発する幼児虐待です。恨みとか金銭目的ではなく、勝手な都合やストレスの発散でいたいけな弱者の生命・身体を弄ぶ行為はおぞましい限りです。こんな連中には、カモの水掻きのアカでも煎じて飲ませてみたい思いにかられます。 本来、「衣食足りて礼節を知る」と言われてきましたが、物質文明に恵まれた現代社会においては十分に満たされているはずなのに、モラルが低下するばかりなのは何が問題なのでしょうか。年配者からしばしば発せられる「今時の若い者は・・」の嘆きはさておいても、確かに昔は、どこの家でも家族と住居を中心とした精神文化が色濃く残っていたのは事実で、それを背景にある程度のモラルが保たれていたのかもしれません。 しかし、今では家族の在り方も多様化し、その土壌を育んできた住居形態もすっかり様変わりしてしまいました。社会の急激な変化によって日本の文化が消え失せつつあるのかもしれませんが、どんなに目をくらますような豪華で機能的なマンションでも、そこからは地についた文化が芽生えるとは思えません。諸事情はありますが、願わくばやはり堅固なロングライフの住居が理想なのでしょう。それでこそ伝統的な価値と現代的な価値の再構築が可能となり、新たなモラルの向上が図れてくるものと期待しています。 (財)日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦 |
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