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野生動物「タマちゃん」
ペットといっしょに考えよう【】写真
きびしい残暑が身にこたえます。
建物も電車も車も一様に冷房が完備されてずい分とすごし易くなっているはずなのに、一歩外に出るとまるで熱したフライパンの中にいるようです。


歳のせいなのか、それとも昔に比べ暑くなっているのだろうか。多分、後者が正解でしょう。豊かな物質文明のお陰(?)で、大気中に排出されるCo2(一酸化炭素)が急激に増えて地上をおおいつくしています。この間、人間ばかりではなく動物たちも植物も、何万年も経て環境に順応すべく進化してきた全ての生物が困惑していることでしょう。

その点、早朝にアイツ(5歳・36kg)と散歩する公園は別天地です。広大な芝生は、サクラ、ポプラ、シダレヤナギ等の木々にかこまれ、強い陽差しを避けて生じた暗い草の道をしばらく歩きます。そして、ハスが咲きカルガモが列をなして浮かぶ水辺のベンチで一息いれるのが常です。清涼な緑一色の中、ユッタリと時間が流れ、日常ストレスの貴重なバッファー(緩衝)となっています。

一方、この夏の話題は何と言っても「タマちゃん」でしょう。本来、自然にいる野生動物についてはソッとしておくことが洋の東西を問わず大原則なのですが、自然に恵まれず、ルールも知らない都会では、目ざといマスメディアに乗せられた大人や子供が「タマちゃん」の一挙一動に沿岸から大歓声をあげ、あげくの果てには夜の川面にライトを照らす始末です。不透明な世相や暑さでストレスまみれの現代人にとって、格好なガス抜きのアイドル出現とうつるかもしれませんが、それでは「タマちゃん」が被った甚大なストレスはどうなるのでしょう。そのために体調をこわして生命の危機でもむかえるとしたら、世界中から指弾されかねませんし、何よりも「タマちゃん」が気の毒すぎます。

本協会は、メディア各位に報道の自粛を求めるとともに、全国から寄せられた数十本に及ぶ心やさしい電話に対応いたしましたが、残念ながら大原則にご理解を示された方はごく一部でした。家庭動物、野生動物にかかわらず、日本人の動物観の一端が透けて見えます。すなわち、動物の立場(視点)から考えるという発想が足りないのです。

願わくば、この機会に子供たちはアゴヒゲアザラシの生態や生理を勉強したり、大人たちは鶴見川の環境美化活動でも積極的に推進してもらいたいものです。

財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦

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