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狼爪(おおかみつめ)
ペットといっしょに考えよう【】写真
木の葉が散り急ぎ、雑木林から見上げる星空が大きく広がってきました。

傍では、枯れ葉に横たわったアイツ(5才・36Kg)が一心不乱に自分の右前足をなめ続けています。自然治癒に頼る動物のやり方なのでしょうが、かなり痛むようです。


実は、散歩中にいつになくトロット(速歩)が鈍く、バランスが悪いので身体検査をしたところ狼爪が折れてぶら下がり、根元から出血をしていました。人間で言えば生爪が剥がれた状態と同じでしょう。寒さとともに俄かに元気になり、はしゃぎ過ぎてどこかに引っ掛けたのかもしれません。早速にホームドクターに診ていただくつもりです。

ご存じのように、生物の進化論では、動物の体には一切の無駄な部位はなく、不必要なものは自然と退化して消滅してきたと言われています。それでは犬科動物の一部が有するこの狼爪は一体どんな役目を果たしているのでしょう。学術的には、犬の爪の一種で前足のパッドと第一関節との間の内側にある「親指」とのことですが、どう見ても歩行の邪魔になるだけで何の役に立つとも思えません。

それでは、名前の由来からして犬の先祖であるオオカミには必ずついているものなのでしょうか。実際の有無についての調査結果は不明ですが、もしかすると彼等が獲物を狩る際に、ある時は岩場で足のバランスを保つために、雪原で動き易いように又長時間の追跡ギャロップ(駆け足)を可能にするために極めて有効であると遺伝子に組み込まれているのかもしれません。そう言えば、日本犬の中でも山岳地域の狩猟犬として活躍する甲斐犬、紀州犬、四国犬等には狼爪の存在が顕著に残されており、いずれもがオオカミに近い資質を色濃く持ち合わせています。

しかし、今やコンパニオンアニマル(伴侶動物)の代表とまで呼ばれている現代社会の犬にとっては、危険な狩猟は全く不要な世界です。当然の摂理として狼爪は、やがて長い年月を経て消え失せていくことになるでしょう。ところで、皆さんのご愛犬には狼爪がついていますか。一度、スキンシップをかねて確かめてみて下さい。

ともすると感情的に可愛がることばかりに走りがちですが、時には、動物たちの生活形態(生態)・行動様式(習性)・生活現象と生活原理(生理)にも目を向けながら動物たちの健康と安全により理解を深めていただきたいものです。


財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦

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