
ペットといっしょに考えよう
散歩の理由
しかし、この間も早朝と深夜におけるアイツ(6才・36Kg)との散歩は皆勤で励行しています。 それほどまでに、敢えて散歩する理由は?と言えば、もちろん自分の健康のためにではなく、ひたすらアイツの要望に応えているからなのです。その要望とは、何を思ったか昨秋ぐらいから散歩をねだって遠吠えのパフォーマンスを演じるようになったのです。 ご存じのように、遠吠えの本家本元はオオカミです。それは主として獲物の臭いを捕らえたアルファー雄オオカミが、狩りの仲間を呼び集めるために発する気高く、長い尾をひいた鳴きかたをいいます。テープを聞くだけでも体がゾクゾクするほど魅力的な声です。 ところがアイツの遠吠えときたら、まるで牛と馬と羊が同時に鳴き出したかのような奇妙なもので聞くに耐えず、ご近所ではさぞかし哄笑しているのでは、と慌てて外に飛び出している始末です。家人に言わせれば、きっと自分がアルファーのつもりで狩りに誘っているのだろう、と理解していますが、それでは本来の主人である私の立場がありません。いずれにしろ、先祖伝来のものか、気紛れな学習のせいなのか犬特有の習性に興味は尽きませんが、皆様のご愛犬はどんな時に遠吠えをしますか。 一般に、犬の散歩については「運動」としてのイメージが定着しているようですが、実は犬から見ればもう一つ「狩猟」欲求の目的があるのです。鋭敏な臭覚を活かして懸命に臭いをかぎまくる先には、いつも他犬の排尿跡やポイ捨てられたスナック菓子等の「獲物」が満ちあふれており、探り当てた時の表情は全身に喜びと力がみなぎっています。 確かに、適正な飼養の一環としては、拾い喰い等の本能を恣意のままに放置すれば毒物等の事故にも遭遇する可能性があり、その防止策として最近ではジェントルリード(口輪付きリード)の利用者も多く見かけているところです。しかし、犬はあくまでも犬としての野生を残していることが大きな魅力でもあるのです。徒に擬人化して、人間の視点から一方的に野生を封じ込めてしまうのは残念な気もいたします。要は、飼い主が彼等の習性・生態を熟知したうえで、十分に健康と安全を留意して散歩をさせることでしょう。 財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦 |
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