
ペットといっしょに考えよう
夏バテ
近年における機械文明の台頭と伝統文化の衰退とのアンバランスな状況を嘆いていたせいか、個人的な見解としては工業のマイナスよりも農業の不作の方がずっと痛ましく感じられ、同情を禁じ得ないでいます。「宮沢賢治の詩」=「凶作による飢餓」=「娘の身売り」の暗いイメージを学んだことのある世代のしがらみかもしれません。 そんなやさき、「処暑」を迎えた週末は一転して灼熱地獄となりました。アイツ(6才・36Kg)はと言えば、いつも通り涼しい早朝と夜間の散歩は問題なかったのですが、日中はまさに身のおきどころのない暑さにグッタリしながら木陰を求めてうろついています。庭には打ち水をし、新鮮な冷水も絶やさずにしてあるのに、ひたすら耐えかねている風情でした。その前日までは曇天と低温に業を煮やし、カッと照りつける暑さが恋しかったのですが、今にして思えば分厚いロングコートをまとったアイツにはラッキーな過ごしやすさだったのかもしれません。 案の定、週明けに異変がおきました。まず、起床の合図(ひと吠え)がありません。更には、神社の石段をいつものように駆け上がれません。夜も然りで、帰宅を察知した鳴き声や遠吠えもなく、シッポの振り方も勢いがないのです。幸い、食欲・排便・毛艶に異常はありませんでしたが、いささか粗野でも元気なだけが取り柄だっただけに、一時は家中で心配しました。結局のところ、急激な気温の変化についていけない一過性の夏バテだったようで、現在はスッカリ回復し、目も輝きを取り戻してきました。日頃は、飼い主責任の一環として、しきりに動物の健康と安全を守る適正飼養を唱えている立場としては、何ともしまりのない話でした。 そう言えば、過日は愛知県を訪れた折り、アイツと同犬種の飼い主より相談を受けました。賢くておとなしく伴侶動物としては申し分ないのだが、体が弱くて野性味がなさすぎるとの悩みです。聞けば生来の室内飼いで、いつもエアコンの前を占領し鎮座しているとのことです。どちらの飼い方がベターなのかそれぞれ一理あるのですが、物の言えぬ動物の立場で考えると人間はつくづく身勝手だ、と思い知らされた次第です。 財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦 |
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