ペットといっしょに考えよう
他人の目
生産農家の皆さんが、春から丹精を込めて育て上げ、ようやく収穫にこぎつけたものを盗むとは、とんでもない話です。 そう言えば、「昔、多摩ニュータウン(東京)がまだ自然のままだった頃、ワンパク連中が連れだって広い丘陵地帯に繰り出した。目的は小さくて味のよいヤマグリ拾いだ。点在する農家が囲いの中で栽培する大きくて立派な栗には目もくれず、ひたすら山野をかけ巡りながら擦り傷だらけになって、リック一杯の土産を持ち帰った。モノの乏しい時代、子どもたちは粗にして野だったが、決して卑ではなかった」それに比べたらこの飽食の時代に、その背景にある精神の貧しさが情けなくて何ともやりきれません。 犯罪ではないが、無責任な飼い主による犬のフン放置も五十歩百歩かもしれません。確かに、人の目のあるところで平然と放置して立ち去る飼い主はいません。その証拠に、週末に限りアイツ(6才・36Kg)と出かける公園ではそれを見かけることは皆無です。 ところが、平日の早朝散歩では必ずと言ってよいほど見つけてしまいます。モラルとは、その人が内面から持ち得た良心の発露と理解していましたが、所詮は他人の目線の有無によって左右されているのかもしれません。 ところで、つい最近のことですが、筆者は2度ほどいきなり背後から厳しい注意を受けました。例によってアイツのでかい後始末をしたビニール袋を交差点の脇からポイと、自宅の前に投げたところでした。もちろん帰路は全て回収するわけですが一時放置の確信犯には違いなく、敢えて言い訳をしたり彼等を責める気持ちは全くありません。疑われるようなことをしたのは事実であり「李下に冠を整さず」とは、このことなのでしょう。むしろ、他人のアンモラルな行為に声を掛ける勇気に「ありがとうね」と返事をしたいくらいでした。どうか、無言でも結構ですから、こんな人を目撃した時にはジッと見つめてやりましょう。そんな風潮がモラルを促し、犯罪を抑止して生活環境の改善につながります。何よりも愛する犬たちの理解者を増やすことになるでしょう。 財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦 |
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