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虚と実
ペットといっしょに考えよう【本当の愛好家とは・・・。<br>(写真:たらの芽)】写真
本当の愛好家とは・・・。<br>(写真:たらの芽)
爽やかな薫風に誘われて、休日の散歩コースはアイツ(7才・37kg)と里山の雑木林を巡っています。お目当ては「タラノキ」の芽であり、楽しみは晩酌の肴とするテンプラです。

某日、毎度のリクウェストに辟易する家人を説得して食材を揃えました。前述の山の幸の他、ご近所からいただいた「アケビ」のツルの新芽、庭木の「柿」の若葉、垣根越しの茶畑から失敬した「新茶」の葉がそれらです。味のほどは?豊富な食料に恵まれた今時の人にとって特別においしいものではないかもしれませんが、野趣に富んだ自然の味覚が珍しく、何と言っても新鮮さが魅力です。

しかし、ようやく見つける貴重な「タラノキ」なのですが、昨今は乱伐が多く、がっかりさせられます。春の訪れとともに、てっぺんにつややかな芽をつけ、日毎に膨らみを増しながらやがて葉を出すわけですが、そこは決して触れずに途中から出る芽と葉を採取するものなのですが、それを鋭利な刃物を使って幹ごと断ち切る乱暴さで、無残な立ち枯れも多く散見されます。多分、自然を愛好しアウトドア派を自認する立場の人たちのふるまいと思いますが、結果として自然を痛めつけるとは皮肉な話です。

同様に皮肉な話と言えば、何も自然界に限らず、人と動物の関わりにおいてもしばしばうかがえる現象であり、該当する自称動物愛好家には泣かされます。一口に動物愛護と言ってもそこには虚も実もあり、本来は生命を預かり育むために膨大なエネルギー(根気と愛情)を要するという「実」を忘れ、一部の飼い主は軽薄なノリの世相に触発されてブランド指向のブーム犬とか、ストレス緩和のためのイヤシ犬を追い求める「虚」が横行しています。ここでは、独り歩きする情報に踊らされ、途中の困難なプロセスが全て省かれており、「生命」をあたかも動くアクセサリーか電気マッサージ機のような「モノ」として扱う風潮があります。その結果は、やがてあらゆる理由付けによって飼育が放棄される事例が後をたちません。即ち、犠牲となる不幸な動物たちの出所は、実は単に感情だけの動物好きな人たちによる心ない仕業なのです。

平日は帰宅が遅いため、アイツとの散歩を終える頃には日付が変わることも度々ですが、そんな時は休日がとても待ち遠しくなります。若葉のしたたる中をのんびりと歩く予定です。

財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦

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