
ペットといっしょに考えよう
たかが犬、されど犬
唯一、不満があるとすれば傍らにいるアイツの様相です。犬はもともと目は特段に利く方ではないので自然を愛でる趣向の有無はともかくとして、脚足行進(リーダーウォーク)こそするのですが、ひたすら落ち葉に顔をこすりつけながら夢中で臭いをかぐばかりなのです。もとより、体高・体長・体重のいずれもがスタンダードを大きく上回る偉丈夫で、時たま頭をグッと持ち上げた瞬間などは、親馬鹿ながらほれぼれしているのに、歩く姿と言えばあまり格好の良くないのが玉にきずです。 しかし、これにはアイツを家族の一員として迎え入れて以来の深いわけがあります。紺屋の白袴と冷笑されるかもしれませんが、かって本欄でもご紹介した通り、犬を飼うことの意義として確固たる目的があったからなのです。それは、アイツの中に残る祖先のオオカミから引き継いだDNAを察知することで、自然界に生息する沢山の野生動物たちを代表するメッセンジャーの役割を果たしてもらい、動物行動学の一端を学びたかったことに起因しているのです。そのためには、見映えの良さを競うショウドッグでもあるまいし、基本的なしつけの他はできるだけ本来の犬らしく振る舞わせ、人間の何十倍とも言われる鋭敏な嗅覚を思う存分に発揮させたかったのです。従って、毎朝晩の日課にしても散歩とか運動という観念は希薄で、むしろハンティングに出かける気分で興味を喚起させ、ストレスの発散に努めてさせているところです。そんな歩行姿勢がいつしか習慣になり、お陰で(?)、庭中にはおびただしい数の獲物(ボール)が散乱し足の踏み場もありません。 誤解を恐れずに言えば、誰しもが犬を飼うことに否定はいたしませんが、一方的な人の都合ばかりが優先され、ヤレ癒しとか愛玩とか、はたまたステータスのツール(対象)として擬人化しながら飼うことなどは全くの邪道であると思っています。これらは、犬の目線で適正な飼育を心がければ、結果としてしぜんについてくるものだからです。穏やかにやさしくアイツの目をみつめながら、たかが犬、されど犬を実感するとともに、来年こそは真のペットブームが到来することを期待しております。 財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦 |
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