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野生動物との共存
立春も間近、早くも庭の片隅では「フキノトウ」が二つほど顔をのぞかせてきました。季節のうつろいは正直ですが、寒さは今がピークのようです。

休日の定番ですが、冷たい風も何のその、ダルマのように着膨れした飼い主と同じく肉の塊と化したアイツ(7才・38Kg)は元気よく近くの公園へ飛び出していきます。

落ち葉をかき分けて林道を歩くのも楽しいのですが、特にアイツのお気にいりは陽だまりの芝生です。いきなり、ドターンと巨体を横たえるや、四肢を振り回し、高く上げ、折り曲げて、奇声を発しながら全身でのたうち回ります。まさに傍若無人で快感に酔いしれているかのようです。やがて、体中にへばりついた細かい枯芝を払い落とすと、何事もなかったかのように、スタスタ歩き始めるのです。日々のブラッシングは欠かさないし、ダニやノミも少ない時期なのですが、すっかりクセになっているようです。同様のことは、自然界におけるイノシシ等の大型野生獣にもしばしば見られ、「ぬた場」と呼ばれる所で転がり回り、泥浴びをしながら体温の調整や寄生虫を落とし、そして他個体とのコミュニケーションをするための臭い付けをする習性があります。

野生動物と言えば、昨秋のクマ騒動がやや鎮静化したと思ったら、今度は青森県脇野沢における天然記念物に指定された北限サルの捕獲問題です。マスメディアに報道されるや、すかさずに心やさしい方々から抗議の電話が殺到してきました。もとより、個の命も大事であることは論を待たないし、それを支持する「やさしさ」を否定するつもりは毛頭ありません。ただし、一方ではサルによる被害者(生産農家等)の苦汁の歯ぎしりが重くのしかかってきて、「やさしさ」だけでは代案にはならず、容易に解決いたしません。誤解を恐れずに言えば、もしもサルたちが、法律による裏づけで保護されて数が増え過ぎた結果、山がエサ不足となり里を荒らし回るのであれば、D・モリスが「自然の摂理」で主張するように、個々の種は他の生物種との共存が可能な限度内で、自らの個体数増加をとどめなければならないのかも知れないし、また、生物界における「間引き」とは、決して種の絶滅にはつながらず、一時の減少後には必ず元に戻り、むしろ種の劣化を防止することも考慮する必要があるかも知れません。悩ましい問題ですが、ここは感情と科学のバランスをとりながら短絡な結論に走らず、人間の英知を結集したいものです。

元を正せば、動物たちは家畜化の前は全てが野生動物であり、一概に命の比較はできないのですが、現代社会では愛玩動物なら個の命に執着し、野生動物に関しては種全体としての命を考慮することがより重要かと思われます。それにより種個有のDNAもきちんと守られるのです。そうだとすれば、ヒョッとしてアイツの先祖はイノシシ(?)だったのかも。

財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦

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