
ペットといっしょに考えよう
バランス感覚
家人からは、「いろいろな所に行けていいわね」と言われますが、どうやら旅行と勘違いしているようで、いささか心外です。 確か、かっては羽を伸ばしたこともありましたが、今ではアイツ(7才・38Kg)のことが気になり、一泊ですらやっと妥協した末です。そして、翌日は決まって一刻も早く会いたくて帰心矢の如くに帰京するのが常です。 本来、出張と旅行とは本質的に全く異なるものです。出張ならば、文明の利器を最大限に利用しながら効率よく最短時間で移動いたしますが、一方、旅行ならば、できるだけ各駅停車を利用し、その土地の風に吹かれながら食・住等の文化に触れてのんびりと移動すること、と理解しています。見方を代えれば、物質文明と精神文化の違いと言えるかもしれませんが、実は、現代社会を心身とも健全に生き抜くにはその二つともが必要で、双方のバランスを上手に取ることが大事なのだと思っています。そのせいか、気ぜわしい出張が続くと、今度は非日常を求め、アイツを伴い車で気ままに全国縦断の旅行でもしたいなぁ−と夢見ているところです。 同様に、およそ似て非なのが動物愛護家と動物愛好家で、しばしば誤解されています。前者は、人と動物の共生を前提に、動物の目線から感情と科学(動物の習性・生理・生態を熟知する)のバランスを考えて飼育する方であり、後者は、ひたすら可愛い・大好き等という人間の目線から感情が優先し、科学が欠如したアンバランスな飼育をする方です。敢えて、動物の飼い主を俎上に上げて二分割するのは、おこがましくて本意ではありませんが、日本の動物愛護の現状を考察いたしますと、残念ながら愛好家が圧倒的多数であることは否定できません。彼等は、ひとたび感情にホコロビが生じると終生飼養の責任を放棄し、多くの不幸な動物たちを派生させる原因となっているからです。 こよなく犬を愛することで有名な英国人は、どこの国民であっても犬に対する扱い振りを見れば、その国の文化水準が推し量れると言っています。即ち、人と動物との係わりは文化という位置付けなのです。それは、豊かな精神文化を誇るかの国の懐の深さをうかがわせると同時に、前述した人と動物の共生の意にも重なります。真の共生とは、それぞれが相手の利となるために存在する、という双利共生に基づいた文化的な間柄を言います。ならばアイツは、まさしく共生のパートナーであり、これからも感情と科学のバランスをとりながらお互いの絆を強め、動物愛護家として英国人にも評価されるように努めます。 財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦 |
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