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東風(春風)
冷たい北からの風が、いつしか東よりへと向きを変えてくると、雑木林がかすかに笑い始め、野には春色が満ちてきます。

心地よい風に吹かれていると、ついついアイツ(7才・37Kg)との散歩時間は延長しがちとなりますが、振り返れば、インフルエンザや花粉症にも負けず、この冬をアイツ共々に健康で乗り切れたことをしみじみと喜んでいます。それと言うのは、街中には例年以上に白いマスク着用の人々が目につくからです。

私事で恐縮ですが、目下、入院中の老いた両親がおります。歳に不足はないのですが、見舞いに出向く度に衰えが目立ち、覚悟はしていても胸が塞がれます。同様に、彼岸の最中には、知人の17才になる愛犬が亡くなりました。ちょうどその日の昼間に会ったばかりでしたが、夜になり急変して息を引き取ったそうです。歳々年々いのち同じからず、は世の習いと実感したところですが、考えてみるとアイツの余生も残り10年はないはずです。林良博(東京大学農学部教授)氏がコメントしていますが、犬は現在を満足して生きる動物との由。ならば、どちらが先に逝くかは不明ですが、可能な限りアイツの健康を見守りながら、一日単位で楽しい時間を共有していきたいと思っています。

俗に、「馬耳東風」ということわざがあります。東風(春風)が吹くと、人は浮かれ出すが、馬には何の感動もないとの意味で、他人の意見や批判にも耳を貸さずに聞き流す人に対して使われます。悪く言えば唯我独尊のわがまま、100歩譲ってもマイペース主義、とあまり誉め言葉としては使われません。残念ながら、人と動物の係わりについても、この種の飼い主が後を断たない現状があります。特に、飼い主責任のさえたる義務である不妊手術については、信じられないケースがあります。地方在住の某飼い主は、近所のメス犬たちが発情すると、自分のオス犬が欲求不満から騒いでうるさいので、可愛そうだからその都度くさりを解き放してやっている。また、飼育禁止のアパートで雌雄の猫を飼いはじめた飼い主は、わずか2年で部屋中を子猫に埋め尽くされ、追い立てを受けて路頭に迷っているとのことです。とんだ動物愛誤家ばかりで、馬が気の毒になります。

この季節は、巣立ち(別れ)と誕生(出会い)が交錯し、悲喜こもごもなドラマが生じる時期でもあります。こんな事態に直面した時は、つきなみな対応ですが、つらい悲しい出来事は話半分に留めるように努め、うれしい楽しい出来事は2倍にして感じとるようにすれば、いいバランスを保つことができる、と確信しています。桜の開花宣言も発表されたし、明日のアイツの散歩は、春風の中でお花見になりそうです。

財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦

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