
ペットといっしょに考えよう
「トラブル」
今まさに、山のように盛り上がった紅葉がはじける寸前で朝日に輝いていますが、いざ落葉が始まると、一気に散り急いできれいさっぱりと裸木になるのが常のことです。それは、あたかも枯葉に託して1年間の世の中の汚れや憂さを晴らすかのようであり、その後はアッと言う間に年の瀬が迫ってきます。 俗に、「月日に関守りなし」と言われますが、歳とともに1年の経過がグーンと早まりながら過ぎ去っていくように思われます。個人的には、幸か不幸か動物愛護の普及啓発業務が多岐にわたり忙しすぎるせいかなーと自覚していますが、同時に社会的にはあまりにも非常識で、開いた口が塞がらないようなトラブル(凶事)が次々におこり、ニュースに追いまくられているからかもしれません。JR西日本の脱線事故、アスベスト問題、建築物の耐震構造偽装問題、そしていたいけな幼女殺人事件等とまるでキリがなく続き、更に自然災害ではアメリカのハリケーンやパキスタンの大地震もありました。 人と動物の係わりについても同様です。とりわけ、後半年には深刻な問題が相次ぎました。獣医師トラブルでは秘蔵の愛犬が無残な犠牲となり、容易に立ち直れない独居高齢女性からの相談、スーパーの駐車場で一瞬の隙に病弱な愛犬を盗まれ、体調を心配するあまりに高額な謝礼つきであらゆる手を尽くして奔走する悲痛な飼い主、不用意にインターネットで安価なチワワを購入したばかりに、中度の水頭症が見抜けずに余命を心配する購入者、そして母子家庭で寂しさのあまり2匹の猫を飼いだしたが不妊手術を怠り、わずか3年で24匹に増えて近隣とトラブルを起こし、やむなく行政に引き取りを依頼する。その後は、自らの無責任を悔やみ合掌の毎日を送っている若い母親等が然りです。 これらを顧みると、まさに「人はパンのみにて生くるにあらず」であり、道義心にもとづいた精神生活がいかに大切かが実感されるとともに、何故にこれほどのモラル低下をまねいたのか思い巡らせています。物質的に豊かになって宗教心が希薄になったことも一理かもしれませんが、たとえ無神論者であってもこの世の中は「やりたくてもしてはいけないこと」と「やりたくないけどしなくてはいけないこと」で成り立っており、特に幼少児のうちから家庭・地域・学校がこれらの峻別をきちんと教え諭すべきであり、同時に大人たちも立派に模範を示すのは当然のことです。目の不自由なアイツだって教えればきっとできます。限りなかった今年のトラブルを肝に銘じて心静かな年末を過ごし、来る年には人と動物たちがもっと仲良く上手に暮らせるような心豊かな社会を願っています。 財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦 |
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