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ペットといっしょに考えよう

干支のイヌ年にあたり
ペットといっしょに考えよう【】写真
明けましておめでとうございます。

暮れも正月も関係なく、アイツ(9才・38kg)との散歩の日課は年中不変ですが、その道すがらどこからでも望見できるのが雄大な関東山地です。取り分けても冬晴れの朝は、白雪の富士山を中心に南西から北東へと大山(神奈川県)、大岳山(東京都)、武甲山(埼玉県)等がそびえたち、くっきりした大パノラマが楽しめます。


遠くからその山容を定かに指し示すのは難しいのですが、重なる山並みの中には奥多摩の御嶽山、秩父の三峰山も含まれています。この二つの山は関東で名高い御嶽神社と三峰神社があることで知られ、いずれもが大口真神と称してオオカミを御神体として祀り、手厚いオオカミ信仰の歴史があります。ご存じのように、その昔、オオカミが田畑の作物を荒らすイノシシ、シカ、ウサギ等を退治するとともに、自然生態系における食物連鎖の頂点に立つ存在として人々から畏敬の念をもって崇められていたことによるものです。そして、江戸時代の後期には両神社がオオカミの絵姿入りのお札を売り出したところ、それは火災盗難除けになると評判がたち、近在の農家だけではなく遠く江戸中でも大人気だったそうです。まさに、オニならぬオオカミに金棒の「ごりやく」があったのでしょう。

ごく最近のことですが、例によってアイツとの散歩の途中、畑の中に気になる立て札を見かけ近づいたところ、写真でご覧のようにそれは正真正銘のオオカミのお札そのものでした。確かに付近は畑ばかりですが、昔はともかく今ではまさかイノシシやシカが出没するわけはありません。多分、豊作を祈念して代々から伝承されてきた迷信を律義に実行していることとは思いますが、この目まぐるしい現代社会で、未だにお札を立てる理由が気になりました。生産者にソッと尋ねたところ、案の定それは犬・猫による糞害防止を目的としたお呪いで、肥料になるどころか農作業の邪魔になるばかりですっかり辟易しているだと言いつつ、当方の手にしていた糞処理袋とアイツを交互に見つめています。相も変わらぬ飼い主のマナー違反に恥ずかしくて身の置き所がありませんでした。

オオカミと言えば、明治時代の終わりにニホンオオカミが絶えて以来、すでに100年が経ちました。自他ともに許すオオカミマニアとしては鎭魂の念とともに、心の片隅ではどこかで幻の個体との出会いを夢見ながら、アイツのあらゆる動作を先祖のDNAに重ねて観察しているところです。つまり、イヌ年であることは取りも直さずオオカミ年でもあるのです。願わくば、これからもいつまでも、この地球上でオオカミが生きながらえる自然環境が保全されますよう祈るばかりです。

財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦

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