ペットといっしょに考えよう
天の怒り
あたかも、天の怒りにふれたかのような豪雨と稲妻がビルの谷間を切り裂いていましたが、実は束の間、仕事の手を休めアイツ(9歳・37Kg)のことを考えていました。 それというのも、単なる親馬鹿(?)からではなく、アイツの視力が不自由になって以来、日常生活はともかくとして何事も嗅覚と聴力に頼りすぎるため、強風や突発的な物音に過敏に反応しすぎることが気になっていたからなのです。 案の定、この間の事情はと言えば、デカイ体でイイ年をしながら小犬のように悲しげに泣き続け、家人の手によって玄関の中に引き入れたところ、スッカリ安心してグッスリと寝込んでいたそうです。しかし、動物ばかりではなく誰しもがやがては障害を抱える予備軍になるわけで、決して笑いごとではありません。帰宅して一安心したところです。 古来、天候が順調なことを「五風十雨」と呼び、農業生産には五日目ごとに風が吹き、十日目ごとに雨が降ることが望ましいとされてきましたが、昨今の異常気象はどうなっているのでしょう。年間を通してエアコンは暖房・冷房の切り替えばかりで、まるで四季が二季に短縮され、春や秋の爽やかな風情が忘れられそうです。それかあらぬか、野菜は高騰し、大好きだったイワシは何と一匹で千円を超える高級魚になり上がる始末で、遠慮してとても食べる気になれません。併せて、国内では少子化にもかかわらずに各地で児童の生命が惨たらしく損なわれています。自然環境だけでなく人心までも荒廃が甚だしく、いったいこの異常続きは何が原因なのでしょうか。天も怒り狂うわけです。 一方、この6月1日から、改正「動物愛護管理法」が施行されます。人と動物の係わりに関する国内で唯一の立法措置であり、今般の改正内容をみても、ようやく欧米先進国並みに近付いてきたと確信しております。中でも特筆すべきは、従来までは政府間の立て割り行政のカベによって押し込められてきた「動物実験等の実施に関する基本指針」が、環境省・文部科学省・厚生労働省の間で省横断的な共通ガイドラインの作成が行われたことです。往時、斯界関係者で確執のあった異常なまでの理屈と感情(科学と倫理)の対立がスッカリ影を薄め、感慨深いものがありました。杞憂の絶えない世の中ですが、せめて人と動物の関係ぐらいは、穏やかに暮らせる心豊かな社会をめざし、皆が手を携えていきたいものです。 翌朝は、一転して雨上がりの五月晴れ、温かい陽射しを浴びながら小屋からはみ出して寝ているアイツのブッチャケタ姿を見ながら、月並みですが降りやまない雨はないと、笑いをこぼした次第です。そうです、異常な事態がいつまでも続くとは思いませんが、むしろ異常を当り前としてノホホンと見過ごしている世の中の方が心配です。 財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦 |
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