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外来生物
ペットといっしょに考えよう【】写真
久しぶりに早朝から夏空が広がりました。

 異常気象でしばらく忘れていた風の音や土の臭いを心地好く感じながら池畔の草むらを散歩していると、アイツ(9才・37Kg)がいきなりズッコケました。石にでもつまづいたのだろうと、例によってとぼけたパフォーマンス(転位行動)を待っていましたがアイツの様子がおかしいのです。しきりに、石に鼻を押しつけています。何と、それは石ではなく体長がおよそ25cmもある外来生物の大きなミシシッピ−アカミミガメ(ミドリガメの成れの果て)でした。

 実は、4〜5年前から気に掛けていたことなのですが、当時、水面に浮かんだ枯葉が風もないのに揺れ動くのを不審に思って足を止めたところ、小さなミドリガメたちの甲羅であることが確認され、このまま成長し繁殖すればどうなるかを杞憂していたのです。今、改めて池に目を転じると、両目の上に赤いイレズミ(?)をした見るからにどう猛そうなのがウヨウヨといましたが、他方では、やさしい目をした在来生物のクサガメたちの姿は全く見あたりませんでした。多分、駆逐されてしまったのでしょう。これは当地だけではなく、残念ながら日本全国で日々繰り返されている生物界における事象でもあるのです。

 ご存じのように、昨年6月には特定の外来生物が引き起こす日本国内における自然生態系、人の生命・身体、農林水産業への悪影響を防止することの目的で「特定外来生物による生態系等に係わる被害の防止に関する法律」が施行され、特に悪影響を与える恐れのある侵略的な外来生物を特定外来生物と指定し、その飼育、販売、譲渡等に厳しい規制の網をかぶせました。アライグマ等の哺乳類、カミツキガメ等のは虫類、ブルーギル等の魚類が然りです。もとより、人間活動により他地域から持ち込まれた動物たちに罪はないのですが、ペットブーム等の影響もあり今では国内に2,000種を超えて存在し、無責任な飼い主に遺棄され、旺盛な繁殖力でのさばりはびこっているところです。

 大旨は、習性、生理、生態の知識もおぼろげなマニアック志向の人間が単純な動機で衝動買いし、終生飼養の責任も果たせずに動物たちの命や自然環境に害を及ぼしているのですが、ましてや、これらの動物たちが原産地において密猟や密輸の末に日本に持ち込まれたとしたら全くの論外で飼養には大反対です。夏休みも真っ盛り、外国産の高額な昆虫等が子供たちに大人気とのことですが、安易に買い与えないよう切望いたしますとともに、この機に上述の法律制定の因って来る環境問題の背景を学んでいただきたいし、併せて利益のみを追求し、もたらす結果に頬被りする関係業者の自戒を期待したいものです。気紛れに水辺を這い出し、アイツに遭遇した一匹の外来カメから察知させられた感慨です。


財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長会田保彦

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