
ペットといっしょに考えよう
暖冬異変
それでも時に凍付く早朝は、霜柱を踏みしめながらアイツ(10才・36Kg)との散歩を終えて熱い風呂に飛び込むと、身体の芯から温もりがにじみ出て本来の寒さを思い出させてくれます。 暖冬と言えば、2月初旬に訪れた沖縄県の宜野湾市の天候には度肝を抜かれました。目的は動物専門学校での講演だったのですが、到着日の日中気温は25度で翌日は何と26度もありました。そこは、すでに春を飛び越えて初夏の装いです。歩道の生け垣には真っ赤なハイビスカスが咲き乱れ、道行く人々はTシャツ姿で、海はあくまでも青く、空には夏雲が漂い、頬をなでる風はまさにさわやかな薫風そのものでした。プロ野球のスプリングキャンプ銀座として名を成すはずです。漏れ聞いたところによりますと、このような風土のせいでしょうか、ご当地の子供たちは小学唱歌や童謡の定番として歌われている「春が来た」や「春よ来い」等、の子供たちが春を待ち侘びる心情が容易に理解できないそうです。無理もありません。いまさらながら日本列島南北の距離とその寒暖の二極化を痛感しました。 この間、寸暇を惜しみ昨年9月にオープンした沖縄県の動物愛護センターに出向きました。数年前に発生したピットブルテリアによる幼児の咬傷事故のその後が気になったからです。 裁判の結果は、犬の飼い主責任が厳しく問われ、確か重過失致死罪に処せられたはずです。センターでは、職員皆様の親切な対応で場内の見学と沖縄県における動物愛護事情の一端に触れさせていただきました。その中で特に目を奪われたのが、狭いケージの中で3匹の子犬に授乳させている母犬のけなげな姿でした。小さな体で(もっとも、アイツに比べるとどの犬も小さく見えてしまう?)やさしく乳首を含ませていました。伺うと、所有者のいない犬で出産直後の高ぶりのせいか、悪戯に触れてきた近くの子供に噛みついて大怪我を負わせ、通報により捕獲されてきた由。せめて子犬たちだけでも、丈夫に育って適正な里親に譲渡し、幸せになって欲しいとの担当者の配慮から本来と異なる措置をしていたところでした。何となく、独房で乳飲み子に授乳させている女囚を想像し、ツーンとさせられました。タイムラグはありますが、一方では人間が罰せられ、他方では母犬が責めを負うという悲しい事実です。 もう一度、自然界に目を戻すと啓蟄が目前に迫っています。土の中で寝ていた虫たちがはい出るの意ですが、このタイミングは暖冬のせいで冬眠をしそこなったクマやヘビのように外の気温で左右されるのではなく、虫たちの体内時計が日照時間に呼応して出てくるとのことで、極めて不変的な太陽の日の出・日の入り加減だそうです。ならば、地球環境問題につきましても、人為的な二酸化炭素の影響による異常な温暖化ではなく、あくまでも自然現象としての一過的な温暖化であって欲しいと願っています。 財団法人日本動物愛護協会理事・事務局長 会田保彦 |
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