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絶滅した田沢湖のクニマス。
絶滅した田沢湖のクニマス。
今日ではわずかな標本が残されるだけの、クニマスという魚がいた。

 クニマス(国鱒)は秋田県の田沢湖だけに生息していた魚で、サケ科の魚類である。田沢湖は日本一の深さを誇る湖で、湖岸から急にその水深が深くなっていて最大で423mにまで落ち込み、透明度もバツグンに高かった。しかし発電所建設の影響で水位が変動し、岸が削られることでその水は汚れてしまった。また、水系のことなる玉川温泉から強酸性の水が引き入れられることで水質は激変。クニマスはこの急激な環境変化により絶滅してしまったのである。  クニマスはベニザケの亜種とされているが、サケの仲間にしては珍しく、1年中産卵していたという習性をもっていた。初春と、夏から秋を最盛期に、通年を通して産卵をしていたらしい。体長は20から25cm前後。田沢湖の比較的水深が深いところに生息していたようで、その漁獲法としても、かなり深いところにさし網がはられたようだ。  体色的な特徴としては、成熟することで黒味が増したという。この体色に関しては、いい伝えが残されている。昔美しい娘がその美貌を保つことに執心して願をかけ、ついにはこの湖の主になったという。母親が娘に会いに湖へと出向いたのだが、娘の姿はすでに人ではなかった。母がもっていたたいまつを湖に投げたものが、この黒いクニマスに変じたのだという。  すでにクニマスは絶滅してしまっていないが、今日日本に生息している淡水魚と呼ばれる魚たちも、絶滅への道をじわじわと歩んでいるといえる。1997年の時点で危機に瀕している淡水魚は、絶滅危惧種16、危急種6、希少種17、保護に留意すべき地域個体群6とされている。その中にはサケ科の仲間もいくつか含まれているが、アマゴの降海型であるサツキマスは、1930年代にはいたるところの川で漁獲されていた。しかし、今日天然の個体群が比較的いい状態で保存されているのは、中部地方を流れる長良川だけとなってしまった。そしてここでも河口堰が建設され、その存在意義や自然の保護などが、論議の的になっている。

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