ナマケモノは中南米の熱帯雨林に生息し、樹上性で始終眠っているような暮らし振りをしている動物である。
ナマケモノの生息分布は中南米の熱帯雨林に限られるが、これは彼らの暮らぶりに大いに関係しているようだ。 ナマケモノの暮らす熱帯林は高温多湿であり、その環境を利用して多様な生物たちが暮らしているのだ。ナマケモノはその高温多湿の環境にもかかわらず非常に毛深く、あまり動かない性質のため、体にコケがはえることもある。コケがはえることで体が緑色になり、周囲の熱帯林の緑に溶け込んで、天敵の目をごまかすのに役に立っている。
ナマケモノは特定の植物を食べ物にして暮らしている。発達した消化器官をもつことで、効率よく消化吸収もできるため、少しの食物で事足りる。水分もその植物や雨露などからとっているため、木から降りることはほとんどない。必要があれば枝を伝って別の木に移り、そこでまた食事をすればすむ。おっとりと暮らしている彼らは、食物を消化するスピードまでがゆっくりとしているのだろう。排泄のテンポもゆっくりとしており、1週間に1回ですむという。このときばかりは排泄するため木から地上へ降りるのだ。
基本的に動かないため水分のロスが少なく、水を飲まずにすむ。寒いとき、体の熱が逃げないように防ぐことができれば、エネルギーのロスはいっそう少ない。こうしてナマケモノの暮らしのすべては、高温多湿な環境下の上に成り立っているのだといえる。中南米の熱帯雨林においては、こうした省エネルギー的な生活こそ真の価値があるのかもしれない。ナマケモノという不名誉な名前を頂戴した彼らは、無理や無駄を省くことで、逆に環境に適応してきたのである。毎日の忙しさに追われて、あたふたと暮らす現代人にとって、一番大切な何かを問い掛けているような暮らし振りである。 |