ペットのネコにしても、動作は俊敏で感覚がいい。野生のネコの仲間はどうだろう。
インド北西部から中近東、アフリカに分布し、草原などに生息する野生ネコの仲間にカラカルがいる。カラカルはサバンナなどの開けた草原のような環境から丘陵地帯まで、多様な環境を利用して暮らしている野生のネコである。
カラカルという名前は、トルコ語で「黒い耳」を意味している。確かにカラカルの耳には黒くてふさふさとした長い房毛がある。この黒い耳の房毛は、体色が茶色一色と無地なことで、いっそう強調されている。トラやヒョウ、山猫などは多彩な体斑をもっているので、この仲間にして特異な存在ともいえるだろう。主に明け方や夕暮れ時などの薄明るい時を中心に行動するが、気温の変化に合わせながら、活動の時間帯を変化させるようだ。暑いシーズンには夜行動し、逆に寒いシーズンには昼間を活動時間としている。主にレイヨウやウサギ、ネズミ、トカゲ、果ては鳥類まで狩りをしているが、これには彼らの俊敏さや跳躍力が生かされている。彼らがターゲットを捕まえる際には、先に触れた耳の長い房毛が役立っているという。獲物となる動物がたてる些細な音を、この房毛により感知するらしいのだ。彼らの名前にもなっている独特の特徴は、だてではないのである。こうして獲物を認識すると後は、ネコ科の動物特有のハンティングの方法で、音もなく獲物に忍び寄るように近づき、もち前俊敏性とジャンプ力を武器に相手を狩るのである。
カラカルはこうした狩りの技術や人になれる性質から、かつては訓練することで、人の狩りの相棒として使われていたことも知られている。反面一方では、人々が飼っているヤギやニワトリなどの家畜を襲うため、駆除されたという経緯をもっている。さらに動物たちを対象としたスポーツハンティングなどにより、その数を減らした。今日ではアジア他の地域ではCITES-1の対象として保護されているほか、動物園などの飼育下では、2世の誕生も報告されている。 |