発達した後肢に短い前肢。長く伸びた尾っぽを使ってしっかりと直立するようにたたずむカンガルーは、コアラと並んでオーストラリアで代表的な動物だ。
有袋類に含まれる彼らは、育児嚢と呼ばれる袋をお腹にもち、産まれた子供をそこで育てる習性でもよく知られている。肉食獣など目立った外敵のいないオーストラリアだが、速く移動するときにはしっぽでバランスを取りながら、この後足を揃えて跳ねることで、7から8mジャンプすることもできるようだ。そうした点からもわかるように、彼らは主に草原などで暮らす地上棲の動物である。
一方でカンガルーの仲間には樹上で暮らす一群もいる。キノボリカンガルーと呼ばれる種類で、ニューギニアなどに分布している有袋類だ。いわゆるカンガルーやワラビーでは走るための後肢が発達しているが、このキノボリカンガルーでは木の上で生活するため後肢の発達はなく、同じくらいの前肢は力強く、しっかりとしたカギ状の爪がついている。もちろんこれは、樹上で暮らすための適応と考えられている。
彼らが暮らすニューギニア島の内陸部は、ほとんどが熱帯雨林におおわれ、標高の高いところには、ところどころに草原が広がる。彼らはその森林に生息し、主に木の葉や果実、花などを食べているといわれる。体長は70cm前後。さらにカンガルーの仲間に特有の、長い尾をもっている。夜行性で主に夜間に活動し、昼間は樹幹で寝ている。その際には頭部を後肢の間に入れるようにして丸くなり、降雨などがあっても被毛を伝って水が流れるようになっているのである。ニューギニアには同じカンガルーの仲間のワラビーも生息しており、そうした動物とは生息環境が重ならないように棲み分けた結果の習性かもしれない。 |