中米に分布するキヌバネドリの仲間、ケツアール。グアテマラでは国鳥にも指定されている、非常に美しい鳥である。
「火の鳥」という漫画作品をご存知だろうか?お馴染み手塚治虫氏によって世に送り出された、名作中の名作である。そこには鳳凰のような鳥が登場し、様々な時代の人々の人生に、色々な影響を与えるというものだ。この火の鳥のモデルにもなったという鳥が、中米に生息している。
メキシコ南部からパナマ西部の熱帯雨林に生息しており、グアテマラでは国鳥にも指定され、その名前が通貨としても使われている。このケツアールはキヌバネドリと呼ばれる仲間に含まれるが、このグループはいずれもアジア、アフリカ、中南米などの熱帯地域に分布しており、その中でも最大の鳥として知られている。別名はカザリキヌバネドリともいう。オスはエメラルドグリーンと赤の羽色が非常に美しいうえ、繁殖期には尾羽が非常に長くなり、その優雅な姿と美しい体色で、バードウォッチャーにも人気の高い鳥のひとつといえる。それに較べるとメスは多少地味な色彩といえ、尾羽も長くならない。一説によると、地上で最も美しい鳥類のひとつとまでいわれている。
昆虫や樹上に暮らす両生類、爬虫類を捕食するほか、自生しているリトルアボガドの実を食べることが知られている。これはいわゆるアボガドの野生種であり、この植物はケツアールに実肉の部分を食べてもらい、その種子をまいてもらっているといわれているようだ。ご存知のようにアボガドの実には油分が多い。それがケツアールの栄養のひとつにもなっている。そのカロリーの高さは果実でもダントツで、「森のバター」と呼ばれていることでもうなづけるだろう。
美しいケツアールだが、きらびやかな姿から飼鳥として捕獲されたほか、森林の伐採や農地の開発による生息地の減少により、その数が減少している。幻の鳥とも呼ばれているようで、国鳥となっているグアテマラではほとんどみられることはないという。 |