既に絶滅していると思われていた動物が、実はまだ存在していた、ということはままある。発見されてまだ三十数年チャコペッカリーもそのひとつだ。
ペッカリーの仲間は中央アメリカから南アメリカに分布する、イノシシに似た体形をした動物である。ウシやラクダ、カバなどと同じ偶蹄目、ペッカリー科に分類される動物だ。チャコペッカリー、クビワペッカリー、クチジロペッカリーの3種がおり、その中でもチャコペッカリーに関しては、つい最近といっていい1974年にパラグアイで発見されたばかりの哺乳類である。 実際にはかなり昔に絶滅したものと考えられており、その化石はたびたび確認されていた。類縁が近いため日本にも生息するイノシシにも似ているが、鼻の先が円盤状である点が異なる。また背腺とよばれる器官が背中の中央にあり、そこから分泌物を出すことでも知られている。この臭いはかなり強烈で、そのにおいが残ることで彼らの存在がわかるとさえいう。ペッカリーの生息地にはジャガーなどの肉食獣も分布しており、彼らはその捕食の対象にもなっている。家族からなる群れで暮らしているが、外敵に遭遇すると、1頭だけがその捕食者の目をひきつけるおとりの役割を買って出て、仲間を逃がす行動が知られている。
先にもふれたようにこのチャコペッカリーは発見されてから間もない動物であるが、その存在はすでに脅かされている。彼らの生息地で暮らす人たちによるウシの放牧や、道路開発などによって環境が悪化しているのが原因として考えられている。さらに食肉のための狩猟や皮を目的とした狩猟により、数を減らしている。実際にこのペッカリーの皮は、繊細で柔らかく、手袋などにするとその手触りなどから高級品といわれている。そのために、「幻の皮」とまでいわれているほどだ。
現在ではパラグアイ政府によって保護されているが、密猟なども後を絶たず、安心できる状態とはいえないようだ。 |