南アフリカには、人々の入植によって滅びてしまった動物たちも少なくない。レイヨウの一種、ブルーバックもそのひとつである。
レイヨウたちはアフリカや南アジアに生息する、一見シカを思わせるウシの仲間である。またの名をアンテロープ。その中でも体が大きく、雌雄ともに発達した角をもった仲間はオリックスと呼ばれている。ここで紹介する、すでに絶滅したとされるブルーバックは、ローンアンテロープやセーブルアンテロープと共に、このオリックスの仲間に含まれる。
ブルーバックはレイヨウのなかでも小型で、後ろへゆるく曲がった角も短かかったようだ。そして何より際立っているのは、その美しい体色である。名前にもあるように、体は全体的に青味がかっていて、タテガミや額、鼻先、肢は赤褐色色をしていた。乾燥したサバンナに茂る林の中に、オス、メスペアか、ないしは5、6頭の小さな群れを作って暮らしていたとされている。食性は草食性で、イネ科の植物などを主食としていたようだ。
ところが、アフリカにヨーロッパ人が入植したことを境に、その生活は一変した。そして何より南アフリカは、ダイヤモンドや金などの鉱物資源に恵まれていたのも災いすることになる。土地が切り開かれることで、野生動物は棲むところを失っていったのだ。何よりブルーバックは、その美しい毛皮を目的に捕獲された。もちろん当時は野生動物の保護という概念などなく、スポーツハンティングという言葉さえ存在していた。さらにイギリスの南アフリカへの進出などもあり、やがては恵まれた鉱物資源をめぐって戦争まで勃発することになる。
ブルーバックは、1799年ないしは1800年に最後の個体が地球上から姿を消し、絶滅したといわれている。 |