緑の森をぬうようにして流れる清流。そうした清らかな流れが、ヤマメの住処である。
美しい姿と味のよさから、「渓流の女王」とも呼ばれているヤマメ。その女性的な美しさから「山女魚」とも呼ばれている。その体色の特徴は、何といっても体側に見られるパーマークと呼ばれる小判形の斑紋だろう。
ヤマメは関東以北の全域に分布しており、河川の渓流域に暮らす清流魚である。フィッシング・ファンにはイワナと並んで人気の高い魚といえるだろう。関東以西ではヤマメに変わってよく似たアマゴが分布しているが、アマゴでは体側に朱色の斑点があることで区別できる。ヤマメは通常川で一生を過ごすが、一部の者は海へと下り、降海型として成長して1年後再び産まれた川へと戻ってくる。川に残って成長した30センチほどのヤマメと異なり、降海したものは50センチほどに成長し、名前もサクラマスと呼ばれる。先にふれたようにヤマメでは小判型のパーマークが明瞭だが、海へと下るものはこのマークが消えて銀色一色になる。この現象はスモルトと呼ばれている。
このヤマメだが、本来であればそれぞれの生息地で野生の個体が残されているはずなのだが、渓流釣りの人気により各地で盛んに放流がおこなわれ、今ではそれぞれの分布地での野生個体の特徴をもったものがわかりづらくなっているようだ。ヤマメ自体もともと日本の在来種ゆえ、それ自体が問題というものでもないように思えるが、それぞれの河川で特徴をもった野生個体の種のも、長い時間を掛けて出来た大きな財産といえよう。放流の実行により当然野生魚との交雑も進む可能性がある。そのため現在では、そうした自然に分布している個体群を守るために、DNAの保存などが検討されているようである。 |