シロナガスクジラやマッコウクジラといった鯨類は、我々にとっても馴染み深いクジラたちである。
そして日本から離れた大西洋には、トックリクジラというクジラが暮らしている。アカボウクジラと呼ばれるクジラの仲間で、体長は7から9メートル、体重7トン以上に達するクジラである。
大西洋の北部、北極から温帯部までの北半球にキタトックリクジラ、南極から温帯部にかけての南半球南部にミナミトックリクジラが生息し、大西洋をすみ分けながら暮らしているようである。その名前は頭部にとっくりのような突起をもつためとされ、実際にメロンと呼ばれる器官が発達しており、それがこれらの種類の特徴になっている。他の鯨類同様数頭程度の群れを構成して移動しており、主にイカなどを食べて暮らしている。そのために潜水能力にも長けており、1000メートル近くにまで潜ることができるといわれている。
大西洋に分布するトックリクジラだが、ちょうど2002年の夏ごろ、九州の鹿児島県によく似たクジラの仲間が打ち上げられた。日本では確認されていなかった種類ということで、当時話題にもなったようである。博物館や水族館、大学などの研究者たちによってそのクジラの詳細が調べられ、種類は絞り込まれていった。その結果、アカボウクジラの仲間であるところまではすぐに行き当り、種の特定が進められた。しかし、個々の種類の標本のデータなどが乏しく、最終的に種類の特定に関しては検討の余地が残ったようである。
大型の海の哺乳類として馴染みの深いクジラの仲間だが、その種類によっては我々にとってまだまだ未知の部分も多い。地球の7割を占めるという海。これだけ世界が近くなった今日でも、地上に暮らす我々にとっては未だに未知の部分が多く残されているようだ。 |