まるで忍者のように、水面を走ることができる動物がいると言ったら、信じてもらえるだろうか?
先に出した足が沈まないうちにもう一方の足を出せば、沈むことなく水面を走れそうな気もする。しかし現実はといえば、もちろん無理な話である。ところが中米に生息する爬虫類に、それを実践する種類がいる。
バシリスクという爬虫類がそれだ。全身が鮮やかなグリーンのトカゲで、オスでは頭部や背中、尾にいたるまで、恐竜のようなとさかや帆のような突起が発達した、独特のフォルムをもった種類である。もっともこれはオスの特徴で、メスや幼体ではこの突起はもたない。熱帯雨林の水辺を好んで生息しており、ほとんどの時間を樹の上で過ごす、イグアナの仲間である。 通常は樹の幹などに四足でつかまっている姿勢でいるが、問題は緊急事態に直面したときだ。敵に襲われそうになった時など、尾を掲げて2本の後ろ足だけで走り出すのである。 そしてその走りなのだが、実際かなり速い。このスピードが、水面を移動するためのひとつのポイントになっている。比較的軽めな体に対して、彼らは2本足による強力な推進力を誇っている。さらには、長い後ろ足の指の先には毛が生えており、これが水面を走るときに足の表面積を広げるのに役立っているようである。そして何よりその足の回転。ひたすら逃げるといった勢いによって水面を突き進むのである。
もちろん、その移動距離は限られたものではあるが。
これは人間でも可能かというともちろん無理である。よくアニメコミックなどではえらい勢いで走るキャラクターが登場したりもするが、リアルな人間の重さをもって、沈むことなく水面を移動するための推進力といったら並大抵ではないのだ。 |