体重わずか3グラムから4グラム。茶色い毛がふさふさと生えたちっちゃな体には大きな目が開き、長い尾がすらっと伸びている。パキスタンの荒地に暮らす、コミミトビネズミだ。
パキスタン南西部のバルチスタン地方が彼らのふるさとで、砂漠地帯の地中に穴を掘って住んでいる。ただ一面が砂だらけの砂漠というわけではなく、石があったり、まばらに草の生えているような環境だ。
体重はわずか3グラムから4グラム。体は大きくても5センチ程度で、目が大きくその体から7から9センチの長い尾が生えている。トビネズミの名前があるように、後脚が発達しているのも特徴のひとつだ。ハムスターのようにチョコチョコと動くのではなく、この後脚を使って跳ねるようにして移動する。しかも脚の指には脚が砂に潜ることがないよう、ブラシ状の毛が密生している。一方で前脚は非常に短く、見ようによってはその存在がわからないほどだ。体自体が小さいことと後脚が目立つ分だけ、よけいに目立たないといっていいだろう。
夜行性で行動はもっぱら夜間のようである。食性に関しては十分な報告はないようだが、わずかに生える草やその根など、口にできるものはなんでも食べて暮らしているようだ。ペットとして日本に入荷され始めてからまだ日も浅い動物だが、小さくそして特異な姿から、あっという間に人気者になった種類だ。俗に「死んだように眠る」という表現があるが、このコミミトビネズミの寝姿はピクリとも動かず、まさに“死んでいるよう”だ。飼育者は、力なくケージに仰向けになって転がっている彼らの寝姿に、何度ひやひやさせられただろうか。荒地に暮らす愛嬌ものは、その寝姿までユニークである。 |