北半球では最大級の海鳥、アホウドリ。翼を広げると2.4mという大きさになる。しかしその大きな体が災いして、地上での動きは非常に鈍く、すぐに飛び立つことができない。そのため簡単に捕らえられ、羽毛採取のために何百万羽という数のアホウドリが捕獲され、絶滅の危機に瀕したという経緯がある。
アホウドリの最大の繁殖地は、東京から南へ600km下った火山島の鳥島だ。かつては島が鳥で埋め尽くされた鳥島では、明治時代に羽毛を取るためにアホウドリが乱獲され、1949年の調査では鳥島や小笠原諸島では1羽も確認できず、絶滅したともいわれたことのある海鳥である。 それが2年後の1951年に、鳥島の南東端で10羽ほどのアホウドリが繁殖しているのが発見された。その後は鳥島にあった気象観測所の人々の手で保護が開始され、1956年に国の天然記念物、さらに1962年には特別天然記念物に指定された。
アホウドリは基本的に、生涯繁殖場所と繁殖相手を変えないといわれている。そして本来の鳥島でのアホウドリの営巣地は、南側の崖にあった、そこはわずかな斜面で、せっかく繁殖が行われても土砂が押し流されるなどの被害にあうことが多く、その環境を改善するためにススキなどの植物の植栽が行われ、土砂の流出を防ぐよう工夫がなされた。さらには繁殖場所の分散を図るためにも、研究保護に携わっている人たちによって、適当と思われる繁殖場所への誘致が検討されていた。その結果北西の斜面が選ばれ、鳥の姿を模した模型を設置するなどして誘導し、新しい営巣地へとアホウドリを誘致することに成功した。さらに新営巣地でもヒナが誕生し、今日へといたっている。
1951年の再発見の頃は、30〜50羽程度だったといわれているアホウドリたちだが、それから50年たった現在、1600羽にまでその数を伸ばしている。一時はその絶滅が危ぶまれたアホウドリだが、こうした野生動物を守るのもまた、人間の務めだといえるのではないだろうか。 |