ドリーといえば、映画「ファインディング・ニモ」で、主人公マーリンの相棒をつとめて、ニモを求めて旅をするというキャラクターだった。
和名はナンヨウハギ。サンゴ礁の海を代表する、ニザダイの仲間だ。とにかくその強烈な色彩が目をひきつける。コバルト色の体色に黒い体斑、黄色いヒレがなんといっても鮮やかだ。
ニザダイの仲間は英語でサージョンフィッシュ(外科医の魚)と呼ばれている。これは尾ビレのつけ根の部分に鋭い棘をもっているためだ。そして種類によってはこのメスを使って縄張りへの侵入者に一撃を加える。外科医というよりも侍といったところだろうか。
ファインディングニモでこのナンヨウハギがキャラクターとしてとりあげられたのも、おそらくはその強烈な色彩のためではなかろうか。鮮やかな青に特徴的な黒い模様、尾ビレが黄色く強烈なコンビネーションをしている。もちろんカクレクマノミと同じようなところに生息していることも、設定のきっかけになった理由ではあるだろうが。太平洋からインド洋に分布しており、成長すると20センチ以上になるが、3センチほどの幼魚は枝サンゴなどを棲みかにして群れでいることが多い。雑食性でなんでも食べるといわれるが、このナンヨウハギをはじめニザダイの仲間には植物質を好んで食べる種類も多い。水族館などの飼育下では、レタスなどを餌として与えているところもあるほどだ。海の中で暮らす魚に、地上の野菜レタスというのもなんとなくミスマッチで、意外な部分があるかもしれない。
ナンヨウハギで面白いのは、危険を察知するとその薄い体を巧みに使って、岩やサンゴの隙間に隠れる点である。夜も自分の体にあった隙間を寝床を確保しているらしい。観賞魚としても人気が高く、愛好家に親しまれている魚である。 |