奄美大島と徳之島にだけ棲むアマミノクロウサギ。1921年3月に国の天然記念物に指定され、さらに1963年には特別天然記念物へと指定されました。
アマミノクロウサギは、体はずんぐりしていて毛の色は名前の通り、黒からこげ茶色。おまけにこのウサギ、ウサギのトレードマークである耳が短く、ジャンプするための後脚がとても短いのです。さらに普通のウサギと比べると、鼻先がやや長いのも特徴としてあげられます。脚には頑丈な長い爪があり、これで穴を掘り、そこを棲み家として暮らしています。
アマミノクロウサギは夜行性で、日中は自ら掘った穴で休息し、夜になると活動を始め、造林地や原野に出てきて採食します。また、ノウサギなどと異なり、鳴くことで仲間同士のコミュニケーションをとることができ、何種類かの鳴き声を交わすことが知られているようです。
アマミノクロウサギは、1900年に入ってから新種として記載されましたた。ですが、現生するウサギの仲間の中でも、太古からの生き残り的な特徴をもっています。分類にあたっては、その原始的な特徴から、メキシコウサギなどとともに、ムカシウサギの仲間として分類され、紹介されたこともありました。しかし実際にはムカシウサギの仲間は化石として存在するもので、すでに絶滅したというのが正しいようです。 その子育ての方法も独特で特徴的なことで知られています。4〜5月に1頭もしくは2頭生み、土中に作った穴に子ウサギを入れて、入り口を土の壁で覆い、隠してしまうのです。そして子ウサギは親によってふさがれた穴の中で、母ウサギが授乳にやってくるのをひたすら待っています。アマミノクロウサギの母乳はとても栄養豊富に濃縮されており、1日や2日に1回の授乳でも、赤ちゃんはすくすく育つことができるのです。 巣穴の入り口を塞いでしまえば、子ウサギを外敵から発見される可能性を、極力低くすることができます。アマミノクロウサギは太古の昔から、そうやって命を繋げてきたのでしょうね。 |