渓流釣りをする人たちの楽しみのひとつが、魚の美しい姿との出会いのようだ。
テクニックの上達や釣り味などのほかに、渓流に暮らす魚の姿を鑑賞するのがかなり大きなウエイトにもなっているようである。
日本では北海道だけに分布しているオショロコマ。サケ科の魚であり、道東から道央にかけての主に河川で暮らしている。分布はさらにアジア大陸東部を経てオホーツク海、ベーリング海、アメリカ北西部にまでも及んでいるという。
サケ類の中には一時川を降って海で成長するものも少なくないが、このオショロコマでは海に降るものは多くはないともいわれている。終生を河川で過ごすものの多いオショロコマでは、その大きさも20cm前後と降海するサケなどに比べると小型だ。イワナの仲間であることを特徴づけるように、背部には白点と鮮やかな朱色の点が散りばめられ、体側にはやはりはっきりとした朱色の点がある。またサケの仲間がもつパーマークに似た斑紋をもっているのも特徴的で、イワナ類の中でも、非常に美しい種類だといわれている。
オショロコマは道央の山岳地帯や道北の一部、道東の河川で暮らしている。河川でも最も上流部を好んで生息しており、その点から想像できるようにアメマスなどより冷たい水を好む種類とされる。同じ北海道でも然別湖とその流入する河川に棲むミヤベイワナは、オショロコマの亜種とされ、陸封型のイワナとしては大型化するといわれるが、今日では大型のものはあまりいないようだ。このミヤベイワナ、北海道指定の天然記念物とされており、捕獲は制限されている。同じイワナ類のアメマス(エゾイワナ)では、北海道のほぼ全域で降海型みられるが、オショロコマの降海型がみられるのは、知床半島の一部の河川に限られるという。さらにその知床半島においても、降海するオショロコマの数は河川にとどまっている残留個体に比べてかなり少ない。北海道だけに暮らす2種類のイワナ。ミヤベイワナは北海道の天然記念物、アイヌたちが「特殊なイワナ」と呼んだオショロコマは隼絶滅危惧種に指定され、その保存が呼びかけられている。 |