コロコロチリチリと虫たちの声の聞こえる季節になりましたね。
イソップ物語のひとつに、「アリとキリギリス」というお話があります。夏の間楽器を弾いて気ままに遊んで過ごすキリギリス。一方せっせと働いて、きたるべき冬に備えるアリ。かくして冬を迎えてみると、遊んでいたキリギリスは食べ物に困り、汗水流して働いていたアリは暖かい家と食べ物が…という明快なストーリーで、誰しも一度は聞いたことのある物語ではないでしょうか。
「アリとキリギリス」のお話の中では、怠け者みたいな印象すら感じさせるキリギリスですが、その実態はといえば彼らは鳴くことで伴侶となるメスを得て、キリギリスのオスに対しては自分のテリトリーを主張しているのです。つまり鳴くことこそがオスのキリギリスにとっては立派な仕事になるのです。
キリギリスは草地や川原など草が生い茂ったところに生息し、秋に鳴く虫の中でも早い時期から鳴き始めます。特に夜ではなく、昼間に鳴くのもその特徴のひとつです。チョン・ギース、チョン・ギースという鳴き声は、羽根をすり合わせることで発生し、夏から秋にかけての風物詩のひとつにもなっています。
同じ季節に鳴く虫で、代表的なスズムシなどでは、羽根を横にこすり合わせて鳴きますが、キリギリスでは縦にこすり合わせて鳴きます。またキリギリスは親と同じ姿で生まれますが、幼虫のころは鳴く事が出来ません。脱皮を繰り返して成長し、5回目の脱皮でようやく鳴く事ができる羽根が生えます。食性も成長とともに変化して、幼虫の間は植物を好んで食べますが、成虫になると肉食の傾向が強くなり、生きた他の昆虫を捕獲して食べるようになります。
もし、キリギリスを草むらから捕まえてきて飼育する場合、エサをたっぷり与えていれば冬を越すことができるかというと…残念ながら、エサがたっぷりあっても、キリギリスは冬を越すことはできないようです。
短い命だからこそ、限られた季節の間で謳歌しているのかもしれないですね。 |