アカシマシラヒゲエビ。最近ではこの名前の方が使われるようになったが、以前は「アカスジモエビ」ともよばれていた。白い体に赤いラインがすっと入った7センチメートルほどの美しいエビである。
アカシマシラヒゲエビは太平洋、インド洋、大西洋に広く分布していて、日本では沖縄から伊豆あたりでも見ることができる。その美しい姿から、マリンアクアリウムでも盛んに飼育されているエビ類でもあり、愛好家の間では英名のまま、スカンクシュリンプとも呼ばれている。
魚にとってエビは美味しい餌のようで、雑食・肉食系の魚であれば大抵エビは喜んで食べる餌なのだが、このアカシマシラヒゲエビはそんな魚達に食べられることがない。なぜなら、この赤と白のエビは、別の部分で魚たちに非常に人気があるからだ。
一見異常がないようにみえる魚たちでも、体表には寄生虫や垢がついていることがある。そうした寄生虫などを食べてくれるのがこのエビであり、そうした行動がクリーニングと呼ばれている。凶悪な面構えと鋭い歯を持つウツボですら、このアカシマシラヒゲエビには、なにもしない。むしろ、アカシマシラヒゲエビのよいお客さんなのだ。ウツボのほかにも多くの魚たちがクリーニングをしてもらうために訪れ、場合によっては順番を待つ魚で長い列ができるほどの盛況ぶりだ。掃除に訪れる魚たちは口を開けたりエラ蓋を開いてみたり、独特のしぐさでエビにアピールする。そしてこのアカシマシラヒゲエビの場合では、体を左右に揺らすしぐさで、自分がクリーナーであることを魚たちにしめす。こうした独特のサインを交わすことによって、エビたちのクリーニングステーションは成り立っているというわけだ。
魚の体をクリーニングする生き物としては、魚類のソメワケベラ類がよく知られているが、エビ類の中にもそうした習性をもったものが、かなりの種類存在する。甲殻類でもこのアカシマシラヒゲエビのほかに、体長がわずか2,3センチメートルカクレエビの仲間も知られている。
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