馬のような顔に、奇抜な模様の曲がりくねった細長い体。尾をサンゴなどにからめてじっとしているタツノオトシゴ。まるで小さな竜のような見た目ですが、これでも魚の一種なのです。
タツノオトシゴは、温かい地域の浅い海に生息し、日本の沿岸でも見ることができます。鉤形にまがった体に馬のように細長い顔、鱗ではなく硬い殻のような骨質板に覆われた表面。姿形の種類も豊富で、体長2センチのピグミーシーホースから、20センチのオオウミウマ、体にトゲが生えているようにみえるイバラタツなど様々です。その奇妙な姿から、一見するととても魚には見えませんが、ヨウジウオという魚の仲間です。
ヨウジウオは紐のように細長い体が特徴で、パイプフィッシュとも呼ばれています。同じヨウジウオの仲間にリーフィー・シードラゴンという魚がいます。この魚は、体は鉤形には曲がっていませんが、馬のように長い顔はタツノオトシゴにそっくりです。
変わった点としては姿のほかに、オスが子供を生む特徴が挙げられます。もちろん、卵を生むのはメスですが、メスがオスの腹部にある育児嚢(いくじのう)という袋の中に卵を産みます。オスはその育児嚢のなかで卵を孵し、ある程度大きくなるまで育てます。そして育児嚢がパンパンにふくれてくると、いよいよ出産です。体を伸ばしては曲げてを繰り返し、親と同じ姿をした子供たちを、一匹ずつ数時間かけて外の世界へ送り出すのです。そんな献身的な姿からか、タツノオトシゴを安産のお守りとしている地方もあるようです。
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