ハロウィンが近づき、ショウウィンドウなどでかわいいコウモリのキャラクターを見る機会が増えましたね。今回は、そんなコウモリと、捕食される側のガのお話。
コウモリは人間の耳には聞こえない超音波を使って辺りの様子を知ることができる。したがって、真っ暗闇の中でも何の支障もなく飛び回り餌を探すことができるのだ。実際にコウモリの眼を塞いでもその飛行には何の支障も無いが、耳を塞ぐと物質に反射して戻ってきた超音波をキャッチできないため障害物を避けることができなくなってしまう。
コウモリはこの能力を、餌探しにも最大限利用している。餌となる昆虫の所在を超音波の反響によって察知し、捕獲しているのである。いわば最新鋭の戦闘機のレーダー並みの性能なのだが、食べられる側の昆虫も何の抵抗もなく食べられてしまうわけではないと言うことがだんだんわかってきた。
例えば、ある種のガは、飛ぶ際に自分の羽に付着している鱗粉を撒き散らすのだが、この鱗粉がコウモリの発した超音波をそれぞれ反射するために、コウモリがガの正確な位置を把握できなくなってしまうのだ。これは、戦闘機の誘導ミサイル対策として利用されている原理だと言う。また、別のガは、コウモリの超音波を感じた瞬間に気絶してしまう特技を持っている。つまり、コウモリのレーダーに捕捉された瞬間に気絶してストンと地上に落下してしまうのである。人間が利用しているレーダーもそうだが、コウモリのソナーも、まるっきり動かないものに対してはお手上げである。さらに驚くべきことに、コウモリに向かって自ら超音波を発して混乱に陥れることができるガも存在すると言う。
コウモリ対餌のガの壮絶な攻防は、現代の高度な戦闘機同士の空中戦にまったく遜色ないというよりも、むしろさらにその上を行くハイテク戦ということができるだろう。
アメリカのある軍事研究者が言った「想像を絶する予算を費やして戦闘機を改良するよりも、家の周りのコウモリを徹底的に調べた方が有効だ」。半ばやけ気味にも聞こえるこの発言が、コウモリとガの高度な空中戦を象徴してるようである。 |