まっ白い体に、つぶらな瞳。アザラシの赤ちゃんといえば、数ある動物の中でも人気の高いもののひとつといえるだろう。だが、その真っ白い期間は2週間程度ととても短い。
イルカやクジラといった海に暮らす哺乳類は、陸上に上がることはなく、その生涯を水中で送るが、鰭脚類と呼ばれるアザラシやアシカは、海と陸を行き来しながら暮らしている。イルカやクジラではその出産も水中だが、アザラシやアシカではその出産も陸上となる。ゴマフアザラシのお母さんは何もない氷上で出産を迎える。そのために赤ちゃんは保護色として真っ白な体をしているのだ。
こうして生まれたゴマフアザラシの赤ちゃんは、約2週間の授乳期間を過ごす。アザラシの母乳は栄養豊富で、実にその40%以上が脂肪分であるという。通常我々が飲んでいる牛乳の脂肪分が3〜4%程度ということから、それがいかに濃いか、おわかりいただけるだろう。この栄養たっぷりのおっぱいを飲んで、赤ちゃんアザラシは急速に成長する。なぜこのように授乳期の赤ちゃんの成長が早めるかというと、これといった武器をもたず、隠れる場所などない赤ちゃんアザラシを早く一人前にして、他の肉食動物から逃れるすべを、できるだけ早く身につけさせたいからにほかならない。アザラシの赤ちゃんのイモムシスタイルの陸上での移動は、我々にとっては確かに可愛く映るかもしれないが、肉食獣たちにとっては絶好のターゲットとなってしまう。一刻も早く水中に慣れてもらう必要がある。
かくして授乳の期間が過ぎると、お母さんアザラシは我が子を海に落として、泳ぎの訓練が始まる。お母さんに体を支えられ、押されたり、つつかれたりしながら、泳ぎをマスターしていくのである。こうして海中での暮らしに慣れ、初めて一人前のアザラシになっていくのである。 |