クワガタ:ミラビリスヒラタクワガタ
|
【学 名】Dorcus mirabilis
【分 布】マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島
【体 長】♂:50mm♀:25mm
|
■説明
全体的に寸詰まりで、ずんぐりとした印象を与えるヒラタクワガタの1種だ。サイズ的にははどちらかというと、小型の部類に属す。ショップではそれほど多く見かける種類ではないが、現地ではそれほど珍しい種ではないとされている。
■成虫の飼育
どのクワガタにも共通することですが、オス同士は激しく闘争するため、よほど大きな容器でない限りは原則としてオスを複数匹同一容器内で飼育することはできない。したがって、中途半端な大きさの容器で複数匹を飼育するくらいであれば、むしろ小型のプラケースなどで単独飼育をした方がいいだろう。飼育容器の底にはクヌギなどの粉砕片(昆虫マットの名前で市販されている)を5〜10cmの厚さに敷きつめるが、その時あまり乾燥しているようであれば霧吹きなどで水分を適度に補給しておこう。その後も、底床が乾燥気味ならば霧吹きなどで適度な湿り気を保つようにすることが大切だ。<br> また単独飼育では特に必要ないが、繁殖を目的としてペアで飼育するのであれば産卵場所兼隠れ家として適当な大きさの朽木を飼育容器の中に入れておく。底床は1〜2ヵ月に1回くらいは新しいものと交換し、絶えず清潔に保つように心がける。その際、ペアを飼育しているのであれば産みつけられた卵があるかもしれないので、古い底床を廃棄する前によく調べてみる必要がある。<br> <br> クワガタムシの病気についてはさほど研究が進んでいるわけではなく、病気にかかるとお手上げといったことも珍しくはない。クワガタムシに限らず昆虫飼育においては、病気は治療よりも予防に重点をおく必要があるだろう。ただ中には我々アマチュアレベルでも対処できるものもあるので、そのいくつかをここに紹介してみよう。<br><br>1.まず一番多く見かけるのが、不適切な温度管理によりクワガタムシが弱ってしまうケースである。ひと口にクワガタムシといっても、産地によりその最適温度はかなり差がある。たとえばアンタエウスオオクワガタは、その多くがアジアの標高1000m以上の山間部に生息しているため、わが国の夏場のような気温30度を超えるような環境下では、調子を崩しやすい。自分の飼育しているクワガタが、どこ産のものなのかをよく考えて、適切な温度管理を行わなくてはならない。極端な話、クーラーなどで室温管理ができないのであれば、山間部に生息するクワガタムシの飼育はあきらめた方が無難だろう。<br><br>2.湿度についても同様のことがいえるが、温度ほどには神経質になる必要はない。昆虫マットが極端にビショビショであったり、逆にカラカラになっていない限りは、まず大丈夫である。<br><br>3.また、クワガタムシの体表に、白い粉のようなものが付着していることがある。これは寄生ダニの1種で、そのまま放置するとクワガタが衰弱するため、流水で洗い落とすとよいだろう。このとき、間違っても殺虫剤などの使用してはならない。またダニが発生したら、昆虫マットも新しいものに交換した方が無難で、交換しないとマットの中に残っていたダニが再びクワガタムシに寄生することになりかねない。<br><br> これ以外の病気や怪我については、現時点ではほとんどその原因や対処方法が確立されておらず、その治療は困難と考えて間違いないだろう。
■幼虫の飼育
オオクワガタの卵は温度により若干の前後はあるが、産卵後3週間程度で孵化する。この際朽ち木に埋め込まれた卵を取り出すことはお勧めできない。できればそのまま2ヵ月ほど放置し、幼虫となった時点で朽ち木を割って中の幼虫を取り出す方が、繁殖成功の可能性ははるかに高いものとなる。幼虫の飼育には1.ビン飼育2.菌床ビン飼育3.朽ち木のまま飼育するの三つがある。順を追って、それぞれの方法を紹介してみよう。<br><br>1.ビン飼育:朽ち木を割って取り出した幼虫を、細かめの昆虫マットを詰めた広口ビン(インスタントコーヒーの空き瓶など)に入れる。このとき昆虫マットには、適度な湿り気があるようにしておくことが大切だ。またビンの蓋には、通気孔を数個あけておくことを忘れないようにしよう。幼虫は昆虫マットを餌にして成長していく。幼虫のフンは細かい粉状なので、ビンの昆虫マットの半分くらいが粉末になった時点で、ビンの中の昆虫マットを新しいものに交換する。このとき、昆虫マット全部を一新するよりも、1/4くらいは古いものを残しておいた方が結果がいいようだ。<br><br>2.菌床ビン飼育:菌床ビンはキノコの菌糸とおが屑をブレンドして広口ビンに詰めたもので、昆虫に力を入れているペットショップに行けば入手することができる。購入に関してやや割高にはなるが、今日では菌床ビンを使った幼虫飼育が一番確実な方法とされている。菌床ビンの蓋をあけ、その表面をスプーンなどで浅く掘りその中に、朽ち木の中で2令まで育った幼虫を静かに入れるようにする。その後ビンの蓋はしっかりと閉めておく。隙間があるとキノコバエがビンの中に入り込んで、繁殖することがあるからだ。 幼虫が食べたフンは茶色くなっているので、ビン全体の大部分が茶色くなった時点で、新しい菌床ビンに幼虫を移す。このとき幼虫と一緒に幼虫の周りの古い菌床も一緒に移植したほうが、ビン交換の際の幼虫のダメージを軽減することができるといわれている。<br><br>3.朽ち木のまま飼育:幼虫飼育の中でも朽ち木を使った方法は、より自然下での生育環境に近いものである。一般には産卵に用いた朽ち木をそのまま使用するが、内部が幼虫によってほとんど食べられてしまった時点で朽ち木を新しいものに交換しなければならない。実際にはかなりの大きさに育った幼虫を新しい朽ち木に移動させるのは、かなり面倒なことなので、産卵に用いた朽ち木がだめになった時点で菌床ビン飼育に切り替えるケースがほとんどといえるだろう。また、菌床ビン飼育をした場合の方がより成虫が大きくなるといわれることからも、特別の理由がない限り菌床ビン飼育の方がお勧めできるだろう。<br><br> 幼虫は脱皮を繰り返し、卵、1令、2令、3令幼虫と成長していく。3令幼虫の体に透明感が失われてきて、黄色味が強くなってきたら、蛹になる準備が始まっている証拠だ。サナギになる直前の幼虫は、まず周りをフンで固めた蛹室というものを作り、その中に入る。その後Cの字に曲がっていた体がまっすぐに伸びてくると、これが前蛹と呼ばれる状態だ。 前蛹はその後脱皮を行い、蛹になる。この前蛹になる準備が始まってから蛹になるまでの期間は、振動を嫌うためビンを動かしたりしないように心がけよう。蛹は、種類や管理温度によって差があるものの、およそ3週間で羽化を行い成虫になる。
■餌
本来カブトムシやクワガタムシの仲間は、自然下ではクヌギなどの樹液を餌としている。しかし飼育下では、リンゴやパインなどの果物で代用することも可能だ。もっとも最近では、各メーカーから昆虫ゼリーが市販されているので、これを用いるのが栄養面や管理のしやすさからいってもお勧めである。昆虫ゼリーの成分はメーカーごとに微妙に異なり、栄養強化をうたったものや、ビタミン添加をしたものなど様々だ。<br> 多数ある製品の中からどれを選択するかは、はじめのうちはかなり迷う問題なので、ショップの方や飼育経験豊かなベテランの意見を参考にするといいだろう。昆虫ゼリーはペア飼育の場合は、餌の取り合いにならないように2か所に設置してやる。このときゼリーの量が多すぎるようであれば、カッターなどでひとつのゼリーを二分割して設置するといいだろう。また、ゼリーは時間とともに変質するので、たとえまだ残っていたとしても、定期的に交換(長くても3日)したい。
■産 卵
産卵前にペアに十分な栄養をつけさせるために、通常の昆虫ゼリーのほかに、バナナを与えるとよいという人もいる。クワガタムシの卵はベージュ色をした円形のもので、朽ち木内に産卵されているため、慣れないとなかなか発見しにくい。しかし産卵が行われていれば、朽ち木の表面をよく観察すると穴(産卵痕)が見つかるはずで、これを確認したら産卵終了とみなし、飼育容器からペアを取り出して別の容器に移す。<br> 意外なことにクワガタムシの飼育に失敗するケースの中で、産卵直後というのが多いものである。これは産卵直後、メスが失った体力の回復を図るあまり、オスや卵を食べてしまうことによるものだ。交尾後は、ペアを一緒にさせておくメリットは何もないので、もし可能であれば交尾を確認した時点で、産卵ケースからオスを取り出しておいた方がより確実にアクシデントを防ぐことができる。<br> オオクワガタの仲間は、基本的に朽ち木の中に産卵するタイプである。したがって、繁殖させたいのならばまず第1に、適切な朽ち木を用意しなければならない。できれば雑木林などに行って、自分でクヌギなどの朽ち木を探すといいのだが、それが不可能であればショップで購入することも可能である。<br> 朽ち木はあまり腐食の進んでいないものを選んだ方が、どちらかというと好結果が得られるようだ。使用前はバケツなどに水を張り、朽ち木を浮かべ十分に水を吸わせてやる。ペアを飼育しているケース内に用意した朽ち木を入れておけば、自然と産卵が行われる。このとき朽ち木は半分くらい、昆虫マットに埋めておくとよい。
★別のカテゴリの昆虫を見る